タックスヘイブン ケイマン諸島の実態


税金がない国と地域

世界には、税金がない国、あるいは税金があっても税率が低い国、いわゆるタックス・ヘイブン(租税回避地)があります。

タックス・ヘイブンで有名な国又は地域には、バミューダ、英領チャネル諸島、英領ヴァージン諸島、英領ケイマン諸島、香港、などがあります。

課税の公平の立場から、課税当局がこれらタックス・ヘイブンを利用した租税回避事案に対し積極的に取組む姿勢は、昔も今も変わりません。

近年では、これらタックス・ヘイブンの国々の一部とは、脱税の防止のための情報を交換する租税協定を結んでおり、今後、一層の情報の収集と課税の強化が進むことは、間違いありません。


ケイマン諸島と小説

タックス・ヘイブンの代表格と言えば、英領ケイマン諸島です。推理作家ジョン・グリシャムのベストセラー小説「ザ・ファーム(法律事務所」によって、広く世界に知られるところとなりました。

新米の弁護士が高額な報酬に魅かれ、ボストンにある大手弁護士事務所に就職するのですが、先輩弁護士が次々とケイマン諸島で謎の死を遂げることから、真相解明に乗り出すというストーリーです。

米国俳優トム・クルーズによって映画化もされ日本でも公開されました。


ケイマン諸島の地理的位置

ケイマン諸島は、現在、米国との間の50年ぶりの国交回復に湧くキューバの南、約240キロに位置し、大小三つの島(グランドケイマン島、ケイマンブラク島、リトルケイマン島)で構成されており、全体の面積は、鹿児島県の徳之島とほぼ同じ広さになります。

ケイマン諸島は、マイアミ(米国)から飛行機でわずか一時間の距離にあるグランドケイマン島のケイマン空港が玄関口となっています。

空港からタクシーに乗り、市の中心街である首都ジョージタウンを通過し、海辺のホテルに到着すると、ロビーの横にはバーカウンターが広がり、海からの心地よい風が吹き、リゾート地らしくバーは、多くの人で賑わいを見せています。


主な産業

ケイマン諸島は、英国、米国、カナダからの富裕層の滞在型の観光地として有名であり、グランドケイマン島には、ニクラウスやノーマンが設計したゴルフ場が三つ、また、島全体には、シュノーケリングやダイビングができる場所が約360ヶ所あり、カリブ海有数の観光地となっています。

ホテルに荷物を解き、タクシーで、市の中心部へ向かってみる。途中、港には、真っ白な豪華客船が停泊し、大勢のカリビアンクルーズの乗客が下船を始めているところだ。ケイマン諸島は、無税の他に、船舶登録料が安いことから、船舶所有者にとっても、使い勝手が良い国でもある。


ケイマン政府の財政収入

ケイマン諸島は英国領でありながら、行政と立法の権限を有している。人口約5万4千人、通貨は独自の通貨、ケイマンドルを使用しており、1ケイマンドルは1.2米国ドルとの交換ができる。米国ドルに慣れている旅行者にとっては、常に、ケイマンドルへの換算がやっかいであり、また、痛い出費となっています。

ケイマン政府の収入は、約990億円(2015/2016の政府予算)であり、主な収入は、輸入品に対する関税、許認可手数料、観光産業収入が財源の主要な部分を占めています。生計費は、税金がない分、米国本土よりは高くなっています。


無税の歴史

ケイマン諸島では、個人や会社に所得税や法人税がありません。無税の国なのです。ケイマン諸島の無税の歴史は約350年前にさかのぼります。

ケイマン諸島は、1670年に英国領となり、ケイマン諸島の無税の歴史は、18世紀に、座礁した英国領ジャマイカ商船をケイマン人が救い、その報奨として、当時の英国王ジヨージ3世が税を免除したのが始まりと言われています。


産業と失業率

ケイマン諸島は、主な産業は観光産業で、特に滞在型のリゾート地として、カナダ、米国、英国からの観光客が多数を占めている。

ケイマン政府の資料によりますと、失業率は、予想値ではあるが、4.7%(2014/6月現在予想値)と公表されています。

また、「今後は、労働人口の自然増と年齢60歳から65歳の労働者の退職などの要因により来年度以降は4.5%に減少すると見込まれ、さらに、このレベルは、今後は公共事業の増加と民間の観光事業に対する投資の増加により、今後2年間は継続される」とコメントしています。


ケイマン諸島と免税会社

ケイマン諸島で無税の恩典を受けるためには、免税会社を設立することになります。

実際の免税会社の設立に関する事務手続きや申請は、現地の銀行、弁護士、会計事務所等が代行しています。設立に必要な事務所、株主、代表者、役員などは、必要に応じてこれらの代行業者が提供しています。

ケイマン諸島の会社法によりますと、これらの代行業者が登録事務所を提供する場合には、免税会社の名称をその事務所の外に掲示することが義務付けられています。つまり、銀行の店舗、弁護士事務所等に掲示することになります。

会社を設立する場合には定款(Memorandum of Association)と定款以外の内部規定(Articles of Association)の作成が必要になります。定款には、次の①~⑥を記載する必要があります。

 ①会社の事業目的、②会社の名称、③会社の種類、④授権資本と株式の種類⑤出資者の氏名と住所、⑥定款等の作成日及び⑦会社の登録事務所内部規定には株主総会等の招集方法、代表者と役員の権限等を記載します。


ケイマン諸島とペーパーカンパニー

ケイマン諸島に本店を有する多くの免税会社は、本店所在地を弁護士事務所あるいは、銀行の所在地としており、実態のないペーパーカンパニーです。

ケイマン諸島の会社法によりますと免税会社の名称を銀行の店舗、弁護士事務所等に掲示することが義務付けられています。したがって、銀行、弁護士事務所のロビーや事務室には、免税会社のネームプレートが掲示されています。

ペーパーカンパニーはネームプレートが真鍮でできていることから、別名、Brass Plate Companyと呼ばれています。


日本からケイマン諸島への投資

世界有数のタックスヘイブンであるケイマン諸島には、日本から約74兆円の証券投資が行われていることが日本銀行の公表した資料から明らかになりました。(2015年末時点)

日本からの海外への証券投資額は、第一位が米国で165兆円、ケイマン諸島は、第二位となっています。日本の機関投資家等がケイマン諸島の免税等の恩恵を利用している実態が改めて浮き彫りになりました。

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